絵画ブログ

絵画好き、旅行好き会社員。美術館訪問を通じて感じたことを適当に書きます。

英国の夢 ラファエル前派展@Bunkamura ザ・ミュージアム

今日は、Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の

ラファエル前派展に行ってきました。

 

19世紀のイギリスで「自然に忠実に」を合言葉に、

反産業主義的・復古主義的な絵を描いたのがラファエル前派だそうです。

そのため絵の主題には昔の物語や神話を

主題としたものが多いという特徴があります。

 

展覧会は全体的に自然の緑が多い印象で、

まるで自分がおとぎ話の中に入り込んだような錯覚を得られる

楽しい空間に仕上がっていたと思います。

今回は、中でも僕のお気に入りの2枚の絵の

感想を書いていきたいと思います。

 

 

■1枚目は、ジョン・エヴァレット・ミレイの『ブラック・ブランズウィッカーズの兵士』。

 

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戦場に赴かんとする兵士が、恋人との別れを惜しむという一場面。

 

この絵、何よりも感動するのは女性が着ているドレスの見事な描き方。

光沢や厚みがリアル過ぎる・・・。立体感が半端じゃなく、

思わず手を伸ばしてしまいそう。

それにしても女性のドレス、本当にアルミホイル

(こんな表現怒られそうですが)のように光っています笑

 

勿論、人物の表情や動きの描き方も素晴らしいと思いました。

女性の表情は唇をきゅっと噛みしめ、無言で悲しみを抑えているようですが、

ドアノブを握る右手が本心を語っちゃってますよね。

男性のほうはドアに手をかけながらもどこか弱弱しく、

視線は恋人に優しく落ちています・・・。

 

とにかく見どころ満載の絵でした。

 

 

■2枚目は、ジョン・ウィリアム・ウォーターハウスの『エコーとナルキッソス』。

 

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この絵は、ギリシャ神話に登場するエコーとナルキッソス
の話を描いた絵です。
 
概要を少し話しておきましょう。
 
★★★★★★
 
ニンフのエコーはある日、ナルキッソスという美少年に恋心を抱きます。
しかし、エコーは以前、好色な大神ゼウスの浮気の手伝いをした罪で、
ゼウスの妻であるヘラに呪いをかけられてしまいます。
その呪いとは、人が言った言葉に対して同じ言葉を繰り返すことしか出来なくなる、
というものでした。
 
そんな経緯から、エコーは意中のナルキッソスに声をかけることは出来ません。
例え話しかけて貰ったとしても、同じ言葉を繰り返すだけ。
ナルキッソスは、次第にエコーを遠ざけるようになります。
 
このナルキッソスの態度に怒った神様がいて、
彼も呪いをかけられてしまいます。
それは、ナルキッソスが自分しか愛せないようになるというものでした。
ナルキッソスは、水面に映った自分の姿に恋をします。
 
この絵画は、思いを伝えたくても伝えられないエコーと、
そんなエコーには目もくれず自分に見とれるナルキッソス
描いた絵だということです。
 

この絵画のエコーの表情からは、喉に言葉が詰まって

苦しそうにするエコーの様子が

とてもよく表れているなと思いました。

薄ピンク色に紅潮する頬と、衣服のはだけ具合が

なんとも色っぽいですね。エコーの体温が伝わってくるようです。

 

ナルキッソスはと言えば、体をよじらせて

水面をのぞき込んでいます。

必死です。笑

彼は、幾度となく水の中の男に触れようとしますが、

その人は手を伸ばすと消えてしまうのです。

ナルキッソスもまた、叶わぬ恋に苦しんでいる

というわけですね。

 

やがて、悲しみにうちひしがれたエコーは体が

消えてしまい、木霊として声だけが残ったといいます。

山に向かって「やっほー」と叫ぶと、声がかえってきますよね?

あれは、体を失ったエコーの声なのですね。

カラオケなんかでも使う「エコー」の語源というわけです。

 

一方ナルキッソスのほうも、

その場で憔悴しきって死んでしまいます。

そしてそこには、水仙の花が咲いたとか...。

水仙の花って、下を向いて咲いていますよね。

それは、水面をのぞき込むナルキッソスの姿というわけです。

ナルキッソスは、「ナルシスト」の語源になりました。

 

★★★★★★

 

 

僕は、『エコーとナルキッソス

を見てその場から動けなくなりました。

そして、一日中ここにいたいと思いました。

蜘蛛の巣に足をとられたような、いつの間にか

絵画と睨み合っているような感覚がしてくるのです。

 
ウォーターハウスの絵は、よく見ると雑だと思えるようなところが
多かったのも印象的でした。
地面に生えた草や、衣服の箇所に見える勢いのよい筆致は、
印象派のそれを思わせるようでした。
しかし、その躍動感こそ私がウォーターハウスの絵に
生命のエネルギーを感じる理由なのではないかと思います。
 
 
 
次は、プラド美術館展に行きたいです。
おやすみなさい。